2007年07月01日

科学入門書:数学はインドのロープ魔術を解く 数理を愉しむ

支えもないのにロープが空高くのびていき、それを昇っていった子どもが消失する―インド古来の魔術の秘密をめぐり、本書の著者である数学者はBBCテレビの取材を受けた。

数学がどうやってあの魔術を解けるというのか!?

……切り口の面白さはもとより、マンガや写真、本の図版などあらゆるユーザーフレンドリーな手段を用いて、数学の面白いところだけをいいとこ取りして紹介する。


偉大な数学者の岡潔は「なぜ数学をするのか」との問いに「スミレはただ咲いているだけで良い。そのようなものだ」と答えた。
 
つまり数学は面白く、役に立つ立たないとは関係なしに、ある種の人々を惹きつけてしまうものなのだ。
 
具体的にどう面白いか、この本を読めば分かる。

例えば111、555、777、と同じ数字を3つ連ねた数は全て37で割り切れる。

哲学者のホッブズは初めてピタゴラスの定理に接したとき、「神に誓ってこんな事はありえない!」と叫んだ。

そういった素朴な所から歩を発して、微分積分、カオス、確立論に何故か顔を出す円周率Π、と数学の最も美味しい所が難しい理論を省き、それでいて面白さははっきりと分かるように紹介される。

そして読者は、吊るされてもいないのに直立するロープ、オイラーの恐るべき公式というとんでもない所にまで導かれてしまう。

 
どんなに相性が悪い人であっても、斜め読みでもこの本に目を通しさえすれば、数学が面白いものであるということを納得してしまうであろう。

モンティパイソンを生んだイギリスの先生だからか、単なるこの人の個性なのかはわからないが、とにかく面白い!

数学書を読んで感心したり感動したりすることはあっても、「ぷふっ」と笑ってしまったのは初めてだった。

10pの挿絵に「代数学の授業を”面白く”するためなら、ビンデン先生はあらゆる努力を惜しみませんでした。」笑える・・・(日本にもこういう人がいたなあ。マンガだけれど)

脚注も笑える!


ところで「数学はインドのロープ魔術を解く」ことについては本書を参照のこと。気になるでしょ?

気になったらこの本をさっそく注文だ!

数学はインドのロープ魔術を解く



数学はインドのロープ魔術を解く 数理を愉しむ ハヤカワ文庫 NF






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2007年06月30日

新しい薬をどう創るか(創薬研究の最前線)

本書は「臨床開発」ではなく「基礎研究」の本だ。

しかし、ただの方法論ではなく、実際に使われている薬がどう創られてきたかという興味津々な部分をコンパクトに紹介している。

例えば、古くはアスピリン、インスリン、モルヒネから新しくは抗ウイルス剤、アルツハイマーの薬「アリセプト(ドネペジル)」、DDSの話題、そしてゲノム創薬まで。

臨床開発も大変だが、基礎でのシーズ探しのスクリーニングや新しい発想など、これまた苦労が絶えない。
だからこそ、「面白い仕事」なのだが。

この本は一般市民を対象として書かれてはいないが、ある程度の化学的知識、生物学的知識が有れば面白く読める。
なにしろ、ドネペジルを開発した研究者自身が書いた章もあるのだ。


本書は非薬学出身者で治験業界、製薬業界に入ったきたひとが薬の勉強をするときの「刺激剤・興奮剤・触媒」として読めるのはもちろんのこと、薬学出身者でも、最近の創薬技術をおさらいするのに丁度よい。

「新しい薬」を創るのって、どうして、こんなに面白いんだろう?

(なお、筆者たちは全て京都大学大学院薬学研究科の教授たちだ。)


新しい薬をどう創るか




新しい薬をどう創るか―創薬研究の最前線







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2007年06月22日

★自然科学と哲学が好きになる本

まずは、哲学を学んでみよう。

哲学の歴史を知ることは人間の存在を学ぶことだ。


ある朝、ソフィーに届いた1通の不思議な手紙。
そこから、ソフィーの哲学にまつわる冒険が始まる。

読者はソフィーとともに、哲学を自然に学んでいく。


世界の人々を魅了した、ノルウェー発の不思議な哲学ファンタジーである。

「一番やさしい哲学の本」として記録的なロングセラー小説となり、映画化もされた。

僕はNHKのラジオドラマで、この物語を初めて知った。


主人公はごく普通の14歳の少女ソフィー。

「あなたはだれ?」とたった1行だけ書かれた差出人不明の手紙を受け取った日から、彼女の周囲ではミステリアスな出来事が起こっていく。

「世界はどこから来た?」「私は一体何者?」これまで当たり前と思っていたことが、次々と問いとして突きつけられる。

そしてソフィーはこれらの謎と懸命に向き合っていくのだ(そして読者も)。



ソクラテスやアリストテレス、デカルトやカント、ヘーゲルなど、古代ギリシャから近代哲学にいたる西洋の主要な哲学者の大半が登場する。

読者をファンタジックな世界へ誘いながら、ソフィーと一緒に彼らの概念をやさしく生き生きと読み解いていく手法は秀逸である。

哲学というこの世界じゅうの物事の根源、存在の意味の解明をおもしろく描き、おとぎ話と融合させた作者の功績はとてつもなく大きい。


娑婆に飽き飽きした時に、是非、どうぞ。哲学者って、子どもの心を持っている大人だ。


ソフィーの世界(上)




ソフィーの世界(下)





ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙







★宇宙一の奇人、エルデシュおじさんの実話。「放浪の天才数学者エルデシュ」

こんなとんでもない人が世の中にいたこと事態が奇跡だが、その頭脳がまた奇跡だ。

面白い本である。

読み始めたら止められなくて最後まで一気に読んでしまった。

その「面白さ」にはいろいろな要素があって,笑いがあり,驚きがあり,ドキュメンタリーな迫力があり,知的な収穫も大きいが,最も感動的なのは,常識はずれの天才をとりまく支援者の優しい心と,エルデシュ自身の純粋で真摯な生き方である。

金銭に執着せず,持っている金は困っている人にあげてしまい,研究の業績に対して贈られた高額の賞金も奨学基金に寄付してしまう。

論文の発想を惜しみなく若い研究者に分け与え,数多くの後輩を育てた。

日本語版の書名の通り,エルデシュは類いまれな天才であり,自宅を持たずに友人の家を泊まり歩く放浪の数学者であった。

また奇行の多いことでも有名で,表紙にはコミカルなイラストが掲げられ「宇宙一おかしな男」というキャッチコピーが添えられている。


放浪の天才数学者エルデシュ




放浪の天才数学者エルデシュ







★今こそ明かそうDNA二重らせん発見の秘密

生命の鍵をにぎるDNAモデルはどのように発見されたのか?

遺伝の基本的物質であるDNAの構造の解明は20世紀の科学界における最大のできごとであった。

この業績によってのちにノーベル賞を受賞したワトソン博士が、DNAの構造解明に成功するまでの過程をリアルに語った感動のドキュメント。


科学者仲間の協力だけでなく確執や嫉妬もすさまじい。

彼らが、二重らせん構造をとらえるに至る過程でのポーリングとの先陣争いのつばぜり合いも熾烈である。

発見後まもなく書かれたということで、いわゆる回顧録とは異なって、当時の新鮮な熱気が伝わってくる。


アメリカからやってきた生意気なヒッピー「ワトソン」と偏屈な「クリック」が、いかに楽しそうに、また悩みながら研究をしていたかが生き生きと描かれている。

科学という普遍性や客観性を求められる仕事と、それに携わる人たちの個性や主観のぶつかりあいの対比が面白い。


また、DNAのらせん構造決定の大きな証拠になったX線解析の写真を持っていたのは ロザリンド・フランクリンという女性。

この女性から、どうやって写真を見せてもらうのか?

その入手方法は、果たしてフェアと言えるのか、どうか。

彼女が待つ悲劇とは?



本文中でクソミソに描かれているX線結晶解析の大御所「ブラック卿」に「紹介文」を書いてもらっているのが、おかしい。


二重らせん




二重らせん






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2007年06月16日

★ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論

ガリレオの指さす方向へ進んだ科学が到達した高み。

そこから見渡される10の主要な科学理論をセレクトし解説する、『エントロピーと秩序』の名匠アトキンス渾身の1冊。


進化論をはじめ、エントロピー、相対論、量子論、シンメトリーを経て算術にいたる、現代科学の10の主要理論を、ポピュラー・サイエンスの名手アトキンスがセレクトし、そのエッセンスを抽出する。


科学に興味を持つ大学生、高校生に是非読んでもらいたい。

若者の人生を変えるポテンシャルを持ったすばらしいポピュラーサイエンス。アトキンスの数々の著作の中でも、際だった傑作。


科学的に世界を眺めるためのヒントが全巻にわたって横溢している。

全体の構成、構想が凄い。

進化、DNA、エネルギー、エントロピー、原子、対称性、量子、宇宙論、時空、算術。

さまざまな話題を往還しつつ、大局的には、身近なものから人間の知覚スケールとは乖離したものへ、具体的なものから抽象的なものへと読者を導いていく、この全体構成の企みの大胆さ。

それを実現してしまう膨大な知識。


人間は、抽象的な概念操作を無理なくこなせる不思議な動物だが、最終章「算術」に至って、数を数えられる、ということの不思議さが実感をもって迫ってきて、身震いする。

この世界、そしてこの世界の一員であるぼく自身の存在の不思議さ、おもしろさを存分に味わわせてくれる。


ニーチェは「怪物と戦う者は、その過程で自分自身も怪物になることのないように気をつけなくてはならない。深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。」と言ったが、【無限】は【怪物】なのかもしれない。

この算術の章はそんな気分にさせられる。(発狂した数学者がいる、というのも分かる気がする。)


ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論




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★人類が知っていることすべての短い歴史

宇宙のはじまり、DNA、プレートテクトニクス、10の-43秒という時間の長さの秘密。

テストのために丸暗記しただけの用語や数字の奥には、驚くべき物語が隠されていた。

科学と無縁だったベストセラー作家が一大奮起し、三年かけて多数の専門家に取材、世界の成り立ちの解明に挑む。


科学を退屈から救い出した大傑作で、科学は退屈だと信じている人に贈る楽しむ(今のところ史上最高の)科学史だ。

特に文系の人にお奨めだけど、もちろん、理系の人も退屈しないこと、請け合います。


人類が知っていることすべての短い歴史




人類が知っていることすべての短い歴史








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2007年06月05日

★統計解析のはなし―データに語らせるテクニック

今までに、僕が読んだ「統計解析」の解説本の中で最もやさしくて、分かりやすかったのがこの本です。

全くの初学者にも役立つと思う。

また、もう一度やり直そうと思っている人にも良い本。

実社会における何かを対象とする学問には、いまや統計学は欠かせない。

エクセルによって統計処理そのものに時間が掛からなくなったぶん、誤った手法を使って、かかなくても良い恥をかく可能性も増えた。

「何故その手法を使うのか」を理解しているかいないかが重要になる。

それはもちろん、治験や臨床試験を担当するモニターにとっても同様に言えることだ。

いつも気になっていたけれど、なんとなく敷居が高くて、ついつい勉強を先延ばしにしていた人には絶対にお奨めです。

きっと、買ってきて1ページ目を読めば、飽きずに読めて、1週間後には統計解析の基本的な考え方と、算出方法と、結果の意義がおぼろげならも、理解できていることでしょう。


統計解析のはなし改訂版




統計解析のはなし―データに語らせるテクニック







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2007年04月06日

数学と論理をめぐる不思議な冒険

ユークリッドからカントール、ゲーデルまで、数理論理学に関わった数学者を中心とした話題を提供する読み物。

幾何学、解析学、代数学、確率、などの幅広い分野に題材を取り、それらと数理論理学との関わりを通して、数学のさまざまな分野の魅力を思う存分、紹介してくれる。

各章で、著者の体験(数学的な冒険や放浪の旅)を通して、数理論理学がどう適用されるかを、高校レベルの知識でわかるように易しく説明している。


数学的思考法を開陳する「奇妙な味」の数学入門書だ。

集合、無限、確率を手なずける数学的思考法の世界。

真理を追究してきた数学者を通して見た数学的論理。



書名の「冒険」には二つの意味が込められていると思う。

話題が散りばめられている冒険談と、数学の知的冒険という意味である。

数学はとかく格式張った定理と証明の形式で語られることが多いが、本書は日常生活や旅行の間でふと考えた数学的思考をベースにしており、「こう考えればうまくいく」ヒントがやさしく語られている。


数学的思考は論理的思考にも通じ、ロジカルシンキングの教条的な本には付いていけない人も、この本なら理解できるだろう。

この本の内容自体、知的冒険ではあるが、そういう世界を探検する意欲をかき立てる本でもある。



数学と論理をめぐる不思議な冒険





数学と論理をめぐる不思議な冒険







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世界でもっとも美しい10の科学実験

実験で知る科学史。

科学史(特に物理学)に残る著名な実験のうち、物理学誌の読者投票で選ばれたもっとも美しい実験のベスト10を式なしで説明し、美しさのポイントを絵画の鑑賞のようにやさしく解説している。


科学法則はいかにして実験されたのか。

科学者たちは実験のことを時に「美しい」と形容する。

ぼく自身も科学者の端くれだが、確かにそうだ。

美しい実験、美しい結果といった言葉づかいに違和感はない。


著者は、哲学者・科学史家という自分の立ち位置から、科学者たちとの対話を通して、その「美しさ」の意味をくみ取り、10の「美しい科学実験」を通して、「実験にとって美しさの意味とは何か」「実験に美しさがあるのなら、それは美にとって何の意味があるのか」という2つの問いに答えようとする。

もともとは雑誌「Physics World」での連載であり、取り上げられた10の実験はアンケートに基づいて選ばれている。


扱っているテーマは、エラトステネスの地球の外周の長さを求める実験、ガリレオがピサの斜塔で落下の法則を確認した実験、ガリレオが慣性の法則を確認した実験、ニュートンがプリズムで確認した光の分散の実験・・・・・・・など等。



おそらく実験とは、科学者にとって自分自身との対話であり、自分自身の哲学が具現する瞬間でもある。

だから、実験を経た後の科学者の言葉は、その深さと重さを増す。

訳者もあとがきに書いているが、ニュートンの「光は屈折するときにその色を変えない」という言明に、この書物の中で出逢うとき、理性ではなく感性を揺さぶられ、涙すらあふれてくる。


科学が、芸術同様に人間の感性に訴えかける営みであることを著すことに、著者は成功している。

10の実験について語った各章を結ぶ間章もとても興味深い。

取り上げている科学実験は、ほとんどが日本では高校までに学んだものだが、教科書で法則を実証するためのものとして記述されている実験像とは異なる、生の科学者の肉声が聞こえてくるようだ。



訳者あとがきで、青木薫さんが、原子の二重スリット実験の写真に涙が出たと書いているが、まさにそのとおりだ。



世界でもっとも美しい10の科学実験




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2007年02月10日

人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」

四万〜三万年前のヨーロッパ。

ネアンデルタール人と現生人類のクロマニョン人が共存していたらしい(!!ゲ!知らなかった。。。)。

両者の交流を示唆する痕跡が、フランスなどに残されていた。

知能に勝るクロマニョン人が作った石器と同じくらい工夫を凝らした石器(石刃)が、ネアンデルタール人の三万数千年前の化石とともに見つかっている。


最新の研究で明らかになってきた私たちのルーツの新常識。

今世紀に入ってから相次ぐ新発見で激変する人類史の世界。

最古の人類からネアンデルタール人、現生人類の謎まで、驚きと興奮の一冊だ。


新聞の科学記者が書いただけあって、実に読みやすい!


人類進化の700万年




人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」





●医薬品ができるまで
http://iyakuhin.web.fc2.com/index.html

●ホーライ製薬
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2007年01月14日

『眼の誕生』が生命の歴史を変えた

最近は鬼のように「ビジネス書」や「自己啓発書」、「ビジネススキル」などの本を読んでいた。
まぁ、仕事から仕方がないのだけれどね。

でも、僕はこれでも薬剤師の端くれなので、科学書なども必ず読むようにしている。

そこで、今回は最近読んだ本の中で面白かった科学書『眼の誕生』の紹介です。


生物の進化を化石などで研究していると「カンブリア紀の大爆発」(爆発と言っても火山ではない)という謎があるらしい。

それは、カンブリア紀にいろんな動物、昆虫類、爬虫類、魚類などなどが爆発的に増えたことを指す。
多種多様の生命が「一夜にして」地球を覆いつくしたようなものだそうだ。


では、何故、そのような「カンブリア紀の大爆発」が起こったのか?
それが、古代生命史を研究している人たちの中で、謎になっている。

本書『眼の誕生』は、まさにその謎解きにチャレンジした本である。

本のタイトルにもなっているが『眼』の誕生が、劇的に生物の進化、突然変異を促した重要なファクターになると著者は主張している。


この本を読むとそんな謎解きにも興味を持つが、それ以上に、化石から情報をどのようにして読むのか、という考え方も面白かった。


ときどき、自分の分野とは全く違った分野の本を読むと面白いよ。



眼の誕生




眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く





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